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そんなつもりじゃなかったのに 銀次を傷つけるつもりじゃなかった。 女たちが勝手に親子と思いこんでいたのを 訂正する必要性も別にないと思っただけ。 小さくなってもお前は変わらないのな。 さっきからオレを読んでる声がずっと聞こえている。 泣くんじゃねえ。 こっちまで泣きたいような気分になる。 |
泣き疲れて
ジリリリリリリン ジリリリリリリン… 「ったくこんな時に誰だよ電話なんざ…波児?」 ピッ 『おー蛮かー?何でかしらんが 銀次がこっちに戻ってきたぞ』 「何だと!?」 『どうやら道ばたで 「蛮ちゃあああん!!HONKY TONKに戻りたいよー」 とか泣き叫んでたらしくてな。 ウチにたまに来てくれるお客さんが 偶然見つけて連れてきてくれたんだよ』 「…そうか」 『どうでもいいから早く戻ってこい、蛮。 銀次の奴お客さんにしがみついたまま 泣き疲れて寝ちまったんだよ。 オレが引き離そうとしても「蛮ちゃん蛮ちゃん」 言って離れようとしない』 「分かった、すぐ戻る」 |
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一番大好きな人。 「波児!戻ったぜ」 「おー、蛮。待ってたぞ。ほれ、銀次はそこだ」 「すまねえ、銀次が迷惑かけたみてえだな」 「いいえ、気にしてません。 ちょうどここに来ようとしていたところでしたし…」 「銀次、ほらこっち来い」 「ん〜…ばんちゃん…すぅ…」 「…やっぱり自分が一番大好きな人って 分かるんですね、子供って。 マスターが私に迷惑だからって寝ている銀次君を 離そうとしたときはてこでも動かなかったのに」 「………そう、だったか。 すまない、こいつどこに行ったか分からなくて 探してたとこだったんだ。助かった」 「あなたが『蛮ちゃん』ですよね。 ずっと銀次君が呼んでました。お父さん、ですか?」 「…いや…」 |
一番大切な…
「いや…銀次は、一番大切な、相棒だ」 たとえ小さくなろうが、 胎児まで戻っちまおうが、 ヨボヨボのじいさんになっても。 こいつは俺様の、たった一人の相棒で 愛すべき唯一無二の人だ |
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目が覚めるときは側にいて 「…んあ…俺、寝ちゃった?」 …あれ? 「…蛮ちゃん?」 …そっか、蛮ちゃん、俺のことちゃんと探してくれたんだ。 一緒に寝てるってコトはもう夜なのかな? …昼間はごめんね蛮ちゃん。 相棒って言ってくれなかったのもショックだったけどね、 本当は蛮ちゃんを見て声がワントーン上がった お姉さんたちにムカッと来ちゃったんだ。 …いつから蛮ちゃんはこんなに かっこよくなっちゃったんだろう? 最初にあったときから、まあ、 悔しいことには格好良かったけどさ、 でも、寝顔はすごく可愛かったのに。 いつの間にか寝顔まで格好良くなってるし …俺の欲目かなあ? 俺のことをあり得ないほど激しく抱くくせに 俺より実は華奢だしまつげ長いし 色白だし指も細長いし。 ケンカして出てってもこんな風に俺が寝て起きると 必ず側にいてくれるし。 …ずるいよ蛮ちゃん…。 |
ずっと二人で。
「…あ?目が覚めたのか銀次」 「あ…蛮ちゃん、起こしちゃった?」 「いーからまだ寝ておけ。起きるには早いぞ」 「…ここどこ?」 「HONKY TONKだ。波児が特別に貸してくれたんだよ、 てめえが俺にしがみついたまま起きねえから」 「………ごめんね、蛮ちゃん、俺、ちっちゃくなって このまま戻れなかったら相棒じゃないって 言われても仕方ない…」 「銀次。いーから寝ろ」 「…ごめん、蛮ちゃん」 「うるせえ」 「…おやすみ」 「………いままでもこれからも、 てめえ以外におれ様の相棒はいねえよ」 「………ありがとう…蛮ちゃん…」 頭良くて器用で強引で口も悪くて飲むとくどくて。 そのくせ変なところで抜けてて 不器用ですごくすごく優しくて。 その一言一言を聞く度に俺は 蛮ちゃんがますます好きになってしまう。 |
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翌朝。 「………ん……?朝か………っつつつ …なんだあ?腕が妙にしびれて…」 「!!!!!!!」 「おいっ!!起きろ銀次!!!」 「…んあ〜〜〜〜??」 |